つるの恩返し
From: Tomo Sakata (sprynet.com)
Newsgroups: fj.rec.outdoor
Subject: つるの恩返し (Tsuru No Ongaeshi)
Date: Sat, 12 Oct 1996 06:55:52 GMT
■□ サカタ@カナダです、バンクーバーも秋ですと無意味な一篇を
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■ 96/10/11(金) □ つるの恩返し
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昨夜の土砂降りから一転、一夜明けたら秋晴れになっていた。全く不
思議な町だ。空気がひんやりとして気持ちいい。風邪で休養中のMのめ
んどうをみつつ仕事。
昼間、窓にごつんとなにかがぶち当たった大きな音がした。あ鳥だな!
と思ってベランダを見ると、スズメより大きなきれいな鳥が、完全に脳
震盪を起こしてベランダにうずくまっている。すぐに立ち上がったが、
ふらふらして飛び立てず、空に向かってくちばしをつきたて苦しそうに
息をしている。かわいそうに、でもあわてるな、しばらくすれば飛べる
から。それまで猫など来なければいいな......と思ってると猫がふらふ
らとやってきた (^_^;)。
大慌てで反対側の窓を開けて、猫よ猫よこっちこっちと手招きをする
のだが、警戒してやってこない。頼むベランダには行くなと食べ物でつ
ろうと思い、台所でなにかないかと探していると、窓ごしに鳥を観察し
ていたMが悲鳴を上げて窓を開いた。「あっちへ行けこのバカ猫!」─
──猫が、まさに鳥を襲おうとしていた。外からは死角なのに、なんで
そこに鳥がいると分かるのだ、おそるべし猫のカン。フェンスの上に飛
び乗って、Mの隙を見てベランダに降り鳥に飛び掛かろうとしている。
鳥はまだそれどころではないよ私はクラクラといった状態。
猫を近寄らせるな! と叫んで傘を握って玄関から外へ飛び出し、猫
のところへ走って行き追っ払った。しつこそうな奴だったので 50m ほ
ど執拗に深追いして傘を振り「いいかお前俺は本気で叩くつもりなんだ
ぞ」と示威行為。叩くつもりなんかさらさらないけど、あわれな鳥を守
るためだ。
それからベランダに戻ってみると、ちょうど回復した鳥が飛び立った。
あ、やった。───がしかし、まだ本調子じゃないようでフェンスの上
に留まって休んでいる。頼むから高い木の枝まで飛んでから休んでくれ
というのだが聞く耳持たず、俺から数mの距離で鳥はじーっとしていた。
仕方がないので、猫から守るためにそこに俺も立っているしかないのだっ
た。......まあいいか、仕事で疲れたし、秋の気持ちのいい空気と透き
通った陽射しをあびて、お前が高くへ飛べるまで待とう。
なんていう鳥なんだろう、喉に縞が入っている。こんなとき図鑑があ
ると、よしはらさんのようになんでも分かって面白いだろうな......な
どと考えていると、別の猫が道を渡ってこちらにやってきた。「とわーっ」
とアホの声を出して威嚇し追い払う。やがて鳥は 10 分ほど経つと、ふ
らふらとどこか頼りなげに飛び立って行った。町中では猫以外に天敵も
いないだろうし、大丈夫だろう。
あの鳥はきっとしばらくすると雪の晩に、とんとんとドアをノックし
て美しい娘さんとなってあらわれ、パタンパタンと機を織りながら我々
に大判小判と米百俵を届けてくれるであろうというと、Mはなんだそれ
は「ムーンレディ」の伝説かと言っていた。そうじゃないけど、なにか
いろんな話が混じってるかな、もしかして。
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│サカタ│
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