書斎派日本蹴球論 (トルシエ日本代表について)
From: サッカーカフェ http://ss19.ibj.co.jp/talk/soccer/socc.htm
サカタ@カナダ−−>○書斎派日本蹴球論(長文すいません)
2000:02:14:19:06:52

カナダに住むため今年の試合を見ていないんですが、今話題になっているどち
らが強いか談義でいえば、まだ加茂岡田時代でしょう。コパアメリカ時に名波
がそう断言した頃から、さほど力は上がっていないようですから。議論するな
らあと2年で加茂岡田時代のトップ値に達し、そしてそれを超えることがトル
シエにできるかということを考えるしかない。

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加茂監督以後これまでで一番よかったのは、【攻】撃面では森島が活躍してメ
キシコを破った加茂 4-4-2 時代で、【守】備面では相手に仕事をさせないこと
に命をかけた WC 3-5-2(実際は 5-3-2)時だと私は思います。これまでトルシ
エのフル代表サッカーを見てきて不思議に思うのは、これらの時代の日本代表
の試合の映像などを、彼が見たことがあるのだろうかということです。まあさ
すがに WC の映像は見ただろうけれど、どうしてああも乱暴に一国のサッカー
遺産を無視してしまえるのだろう。

WC 後の 98 JOMO Cup は、WC 代表+若くてうまい選手(小野、柳沢、奥など―
―ちなみに監督は西野朗)、すなわちファンが夢見た日本代表そのものといっ
たオールスターメンバーで、これが寄せ集めなのになかなかいいサッカーをし
ていたことを覚えています。うまい選手を集めてやらせれば即席でもここまで
できるのかと思いましたが、同時に加茂岡田チームの4年の苦闘を見てきてい
るからこそ、日本代表っぽいサッカーのビジョンというものが誰の頭にも刷り
込まれていて、初組み合わせの選手たちがいきなりこういうサッカーをできる
んだなとも思いました。どこのサッカー大国もこうして強くなってきたのだろ
うなと思いました。

がトルシエは、その日本が4年間(もっと前から?)積み重ねてきた小市民的
しあわせ日本サッカーを踏襲せず、そこには何もなかったかのように自分のビ
ジョンを荒々しく導入してきました。名波との確執は「小市し日サッカー」側
からの当然な拒否反応でしょうし、若い世代で成功しているのはその拒否感が
ないからでしょう。

が、「小市し日サッカー」では上記の【攻】でも【守】も最後の一線で通用し
なかったことを思えば、トルシエが違ったチームを目指すのは理由があること。
問題はそれが本当に完成し、完成時には願った強さを備えられるのかというこ
とで、そこで協会からファンまで誰もが思い迷っているわけでしょう。トルシ
エ自身にも、確実なことなんか絶対に言えないわけで。

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私にいま見える希望は、名波やカズなど「小市し日サッカー」をやり尽くした
選手たちが肯定的な態度を見せはじめていることで、それは「これで行ける」
というサインなのではないかと感じています。「小市し日サッカー」で行ける
ところまで行った選手からのこのポジティブバイブレーションは、信じる力と
なってチームを必ず加速させるでしょう(別に名波やカズがチームに残らずと
も可、念のため)。

トルシエも、これらの選手をわざわざ呼んだことに加え、これまでは試合後毎
度ネガティブな選手批判を繰り返していたのが、ポジティブな態度に切り替え
ているように見受けられます。チームがトルシエの言いたいことを心身とも全
面的に押し付けられていたように見えたコパアメリカから遠く離れて、今やっ
と日本サッカーはトルシエに、相応の自分の持ち味を返し始めてるのではない
かと感じます。

まあ試合を見ずにこんなことを想像するのもバカな話ではあるのですが、もし
この想像が当たっているなら、それはイイぞとわくわくします。トルシエが日
本からなにがしかを得てくれるのはナイスだし、当然のことでもある。じっさ
いトルシエの言うことは面白いし、意外さに目を開かされる部分も多いわけで、
その反対もあってしかりと外国暮らしの私は考えます(通訳が同国人なのがちょっ
となー)。また中村や小野のインタビューからは、メンバーや監督の仕事に対
して冷静な批評を口にするという、これまでの選手になかったような面が、お
そらく彼の影響下から生じているのも感じられます。

この楽観的な観測がはずれておらず、こうして過去の日本サッカーを体現して
きた選手たちの記憶と、トルシエのイメージおよび新しい才能が交じり合って、
新しい日本と新しいトルシエのサッカーが生まれてほしいものです。せっかく
日本でやってるのだから。


鎖国の出島にいるトルシエ (トルシエ日本代表について 2)
サカタ@カナダ−−>○鎖国の出島にいるトルシエ 2000:02:15:14:21:47 【gazetta さん:「日本が異質なのだと気づいて維新を成し遂げるのか 」】どうも日本的感覚が異常でトルシエがまっとうだという考えをする 方々が多いのですが、トルシエの言動はどこの国に行ってもかなりエキ セントリックであることに間違いはないでしょう。それをさて置いて日 本的ななにものかだけを非とするという態度は、すでに古く死に絶えつ つある多文化拒絶思想 (アンチ multiculturalism) なのではないでしょ うか。トルシエ自身のなす発言自体にそういうケが多分に含まれている (た)ため、彼はどこの国のメディアともうまくいかなかったという過去 があるのだと想像します。 通訳が同国人なのが残念と私が書いたのはそういう意味で、彼が鎖国の 出島に置かれ、思想の柔軟化を促すことが不可能な環境にあるのではな いかと感じるからです。私がもし彼の通訳ならば、彼が日本のサッカ ーと文化に対してなにか過激な反応を示すごとに、一緒に考え日本人か らの観点を示すよう努力しますが、同国人では同じようなフラストレー ションを感じてぼやき合うだけに終わってしまう可能性が高い(これは どこの国のどんな職業の外国人でも同じ)。そして過去には彼のその過 激な反応が、そのままマスコミに表出し、それがフル代表の駄目な成績 とお互いに影響を与え合っていたと思います。 日本で日本人を集めてやる以上、トルシエが自分の価値観だけでチーム を推進できるパワーには限度があるんじゃないかと思います。「各自が 自立し、自己主張とコミュニケーションが出来....」という考えはとて もよいと思いますが、トルシエの考えるフランス型自立主義でなければ 「世界と互角には戦えない」かどうかはまだ分からないのではないでし ょうか。日本はまだ一度しかトライしていないのだから。 トルシエの考えと、日本オリジナルのなにか、たとえば「(トルシエは 筋肉をつけろというけど)サッカーは筋肉つければいってもんじゃない 」という中村の考え、あるいはコパアメリカでトルシエの指示をあえて 破り動いてホサれた名波・井原に見られた日本産自立心が合わさって、 今までになかった質の高いものが生まれるというのが理想なのではない かと思うのです。そう、いっぺん井原も代表に呼び戻してじっくり話し 合ってくれたら面白いな。2002 年で彼を使うかどうかなんて今考える 必要はないのだから。

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