【二輪免許取得篇・9 --- 8時間耐久ツーリング】
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Subject: Re: Our Fellow Bikers :-) Vol.3
Date: Mon, 29 Jul 1996 05:35:06 GMT
【二輪免許取得篇・9 --- 8時間耐久ツーリング】
■ 96/07/28(日)
昨日は無茶苦茶たいへんな日でありました。はあ (=_=)。
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私の 125 スクーターで B.C. 州バイク免許を取ると「二人乗りできない」
ということを親切なNさんが先日ここで知らせてくださいまして、役所に
問い合わせてみたらその通り。よわったなと思っているとさらに親切なこ
とにNさんは、試験車を貸してくださるというのです。そこで昨日Nさん
にバイクを借りに、バンクーバーから1時間ほどの Maple Ridge という町
へ向かったのですが、これが私のスクータ高速道初走行なのでした。
制限速度 90km/h+αで流れている道を全開で走ったのですが、どう頑張っ
ても 85km/h くらいしか出ません。まあ出ないものは出ないし、回りを見
渡すとさほど交通の邪魔になってるようでもないので大丈夫だなと走り続
けていると、ちょうど途上の Burnaby というところを通過したところでい
きなりガク〜〜ンとスローダウン! ───嘘だろう焼き付きか?! と真っ
青になりながら路肩に止めてみると、エンジンはなんともなく元気に回っ
ているのに、後輪にパワーが行ってないのです。───ドライブベルト切
れだ。
ショック。落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせますが、絶望のあま
り座り込みたくなります。プラグ・バッテリー回りなら自分でチェックで
きますが、相手はフルカバードされたエンジン部の中。車載工具もないし、
パーツもない。どうしようもない。まいった。そして僕は途方に暮れる。
もはやこれまでと観念し、ここでヒッチハイクできるだろうかと考えな
がらぼんやりと道を眺めていると、なんたるグッドタイミングか巡回中の
ハーレー白バイポリスマンがやってきてくれました。さっきまでは会いた
くなかったけれど、今はこれぞ天の恵みでありました :-)。
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どうしたんだい? 故障なのです。彼はそうと分かるとすかさず無線で
本部へ連絡を取り、近くのバイク屋を探してくれました。ダウンタウンの
私がバイクを買った店を呼んでくれると助かると頼んだのですが、遠すぎ
て来られないと思ったらしく、結局一番近いところに連絡。「1時間で迎
えがくるから、座ってリラックスしていなよ」と彼はさわやかに笑い、かっ
こよく走り去りました。いい奴だなあカナダ白バイって :-)。
で待ってたのですが、1時間経っても2時間経ってもやってこない。待っ
ていてくれているはずのNさんにも連絡ができないのであせります。2時
間の間、いったい何千台の車と何百台のバイクが通り過ぎるのをむなしく
見送ったことか。日陰に座ってはいるものの、真夏の風に喉が乾く。おり
しも日本では鈴鹿8時間耐久レースの日、私はここで8時間耐久待ちなの
だろうか。バイクが何台も「おお・お気の毒」とVサインを送ってくれ、
パトカーが一台止まってくれ、バイク野郎が一人「大丈夫か?!」とわざわ
ざ止まってくれました。いや、バイク屋がこっちに向かってるはずなんで
す、ハイ、......サンキュー (^_^;)。
2時間が過ぎたところで最前の白バイポリスマンがまた巡回してきて、
「まだ来てないのか?!」とびっくり。もう一度連絡しなおしてくれました。
あほなバイク屋が別のランプ付近を探していたらしい、がくー。「じゃ、
今度は大丈夫だから」と彼はさわやかに笑い、かっこよく走り去りました。
いい奴だなあカナダ白バイって :-)。結局2時間30分待って、ようやく
ピックアップのバンがやってきました。
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私とバイクは、バンクーバーと Maple Ridge の途中にある Port Moody
という町のバイク屋へ連れていかれました。これは8耐のピットだ。とに
もかくにもNさんに電話をして事情を説明し平あやまり。Nさんは大丈夫
ですよ分かりましたと心配していてくださった様子。帰る予定の時間すら
過ぎていたので家にも電話をしてから、缶アイスティーを手にいれがぶが
ぶとドリンク・ドリンク。そしてメカのおっさんに経緯を説明しました。
「......というわけで、ドライブベルトが切れたのだと思うんですよ」
「OK、わかった。2〜3日置いていけ」。
──そんな! こんな見知らぬ町に連れて来られ(とは言わなかったけれ
ど)3日後にまた来いといわれても、この町から出ていく方法がないです
よ第一。頼みますからお願いしますと訴えると、じゃあパーツを探してや
るとのこと。えらい頑固そうな親父で参りました。町中での故障だったら
買った店に持って行ったのですが、ついてない。まあ町中では起きえない
限界走行での故障だったのかもしれませんが。
パーツを探してもらってる間、これでパーツがなかったら代車を出して
くれるだろうか、絶対無理だなこの調子じゃ...と考えていると、Nさんが
電話番号を調べてバイク屋へ電話して来てくれました。今から拾いに行く
からそこで待っていてください。「───そ、そんな (;_;)」。親切すぎ
る (;_;)。
ピックアップトラックでやってきた初対面のNさんが言うには、パーツ
があればNさんが直せるとのこと。それが一番だなと、パーツだけあれば
なんとかしますからとバイク屋にいったのですが、週明けまで入らない旨。
うーん、残念。置いて行くしかない。ああ、愛する私のばかなスクーター
をこんな知らない町に一人置いていくのは気が引けるけれど、仕方がない
のです。お父さんは置いていきたくて行くわけじゃないのだよ。
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Nさんは文章から想像するよりもがっしりした体つきのスポーツマンと
いう感じで、メカに詳しそう。道中「ドライブベルトが切れるというのは、
よほどのことがないとあり得ない。メーターの2万よりも、実際は走行距
離が行ってるのかもしれない」などと教えてくれました。そうかもしれま
せんねー、他はまあそこそこ大丈夫だったので、まさかの故障でした。
そして彼の家につくと、そこは竜宮城のような宝の山でありました。自
分でレストアしたという美しくかわいいモンキーが年式各種計6〜7台、
私が借りることになっているきれいな SR250、どうみても動かなそうなホ
ンダの古い実用車。そしてこれもレストアされたという美しいウッドフレー
ムのミニクーパーはじめ車が4台。ガレージの天上裏はどう見ても業者の
パーツ倉庫。スナップオンの赤い数十段ツールボックスに入った完璧美麗
フル完全ツールセット(美しい!)。さらにはコンプレッサーに溶接装置に
塗装装置、塗装をはぐためのサンドブラスター (!) まであります。
そしてなによりも驚いたのは、トレーラーに積まれた個人用フォーミュ
ラレーシングカー(1600cc)なのでした。腰が抜けました。趣味でFカー
を持ってる人なんて初めて見た (^_^;)。隣り町 Mission にテクニカルな
サーキットがあり、そこやシアトルでのレースに出ておられるとのこと。
すごい。聞けば日本にいらした頃はヤマモトレーシングと懇意で、A級に
なる前の岩橋などをよくご存じとのこと。なるほどー、そういえば今日は
日本じゃ8耐ですよ、岩橋も走ってるかもしれません。......全くめまい
がするほどの、モーター関係宝箱をお持ちのN氏なのでした。
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そして試験車として貸していただけることになった、これも美しく手入
れのされた SR250 に乗って私は帰りました。クラッチをつないだ瞬間後ろ
にがくっとのけぞり。別にパワーがすごいわけではなくて、スポーツバイ
クとスクーターしか知らない私にははじめてのアップハンドル・バイク、
垂直に立った体に加速Gがもろにきてしまうのです。アクセルを開けるた
びに上体と首が後ろへかっくん。人が見ていたら恥ずかしい (^_^;)。Fフォー
クが長く、ブレーキングで深く沈んで車体の姿勢が大きく変わるのもちょっ
と怖いかんじです。
しばらく走って体がそれに慣れ、加速に遅れなくなったところで高速に
乗りました。ものすごい風圧。ハンドルを握る手に力が入り肩が凝ります。
想像してましたよりもすごい風だわ、こりゃ。ハーレーで高速をブッ飛ば
す人々はこんなことをしてるのか。いや、体が垂直でこんなにきついんだ
から、そっくり返ってる純アメリカンはホントに後ろに落ちる危険がある
のではないか :-) などと考えつつ、90km/h くらいでゆっくり帰っていき
ました。風に慣れてしまえば快調快調、250 単気筒は軽快で楽しい :-)。
昔 SRX250/400 にも乗っていた私は、高速から降りた後は「どのギアでど
の回転が一番おいしいバイブレーションがくるんだろうか」と無意識に右手
で探っていました :-)。長い8耐ツーリングも終わりにさしかかり、陽射し
は西日になっていました。
帰るとちょうど TV ではオリンピック 100m 男子決勝をやっていました。
あのね、私は超ラフな8耐の一日を終えて帰って来たのよと訴えるんです
が、奥さんと観戦にやってきていた友人はそうたいへんだったわねと聞く
耳持たず。息詰まるフライング合戦の末、カナダの選手がワールドレコー
ドで優勝。二人は絶叫して抱き合い涙をこぼしています。......まあいい
か、日本サッカーがこないだブラジルに勝ったのと同等の快挙であろうか
ら、ここは大目に見てあげよう :-)。
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というわけで、えらいくたびれる一日でしたが、バイク免許取得作戦は
数多くの困難を人様の親切で乗り切って、最終フェイズに向かいつつあり
ます。どうもありがとうございました、Nさん (^_^)。