Cambie Bridge ('96春)
From: Tomo Sakata (sprynet.com)
Date: 18 Feb 96 10:11:54 GMT
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ちょっと落ち込むことがあったので、眠れずに今、あれこれと考えをめ
ぐらせています。
僕の住むアパートからバンクーバーのダウンタウンへ行くには、Cambie
という橋をバスで渡ります。橋の上からはダウンタウンの全景と、その向
こうに立つ頂きの白い山々が見えて、美しい。その橋の上をうぃーと走る
バスの上でいつも、僕はテープを聞くのです。日本から持ってきた、いろ
いろなロックミュージック。好きなバンドやシンガーや、自分が昔やって
いたバンドのライブなどを、ヘッドホンステレオの安い音で。
(Hachi & Tomo, 1993)
古いテープだとなにが入っていたのかなんて当然忘れているので、思い
がけない曲がいつも飛び出してきます。───おお、イギーだ。戦慄。あ
あ、やっぱりキヨシローはいいな───。日本でなにもかもある暮らしを
していたときには、当たり前なので気がつかなかった、ものすごくいい音
たち。いいメロディ、いいミキシング、いい言葉。バスの乗客の中でひと
りどきどきと心臓を鳴らしながら、やっぱり音楽ってすげーなと静かに興
奮するのです。
そして、そういういい音を聞くと、いかに普段 TV のひどい音に自分の
耳が痛めつけられているのかが、よく分かります。耳がいい音に飢えてい
る。かわいそうな耳だ、意識してたまにはねぎらってやらなければ。
将来バンクーバーからいなくなったとしても、Cambie の橋から見えるダ
ウンタウンと山と、その橋の上で聞いた音楽は忘れないだろうと僕は思い
ます。