ヘルメット物語
 京の都にKさんという、ホンダV型4気筒の快速モーターサイクルに乗る
若者がおられるのですが、彼はなぜなのかモーターサイクルレーサーのヘル
メット型アイコン(コンピュータの画面上操作ボタン)造りに異常な情熱を
燃やしているようです。ご好意でファイルを分けてもらったのですが、これ
が驚愕の出来の良さ。数百種の、どうやって作ったのだこれは一体という美
麗極少ヘルメット画像たち。おそらく彼は『この誤った方向へ流れ出してい
る知能とエネルギーをもっと勉学に使えば......』などと回りに呆れられて
いることでしょうが、私はファイルを分けてもらえたので本当に素晴らしい
と思います。

 そのアイコンをにやにやしながら眺めていると、懐かしいライダーたちと
その走りが目に浮かびます。


 これは、私がRZ250という名車に乗っている時にかぶって いた......というか、RZを買って以降カナダに来るまで6年く らいずっとかぶっていた、アメリカの名チャンピオンエディーロー ソンの複製ヘルメットです。なつかしい (泣)。吉祥寺の西武スポーツ館の 西武優勝記念安売りで 9800 円で買ったんです。やっぱり今見てもシンプル でかっこいいなあ。ローソンは地味なライダーでしたが、スペンサーとかガー ドナーとかシュワンツという派手なレーサーたちを常に抑え続けて、三度も チャンピオンを取ったえらい人なのです。日本の平選手と組んで鈴鹿の8時 間耐久という大レースを勝ってくれた時もうれしかったなー。
 吉祥寺の西武スポーツ館といえば、昔はバイク用品に力を入れていて、と きおりバイク関係のイベントを開いていました。そのイベントのひとつに、 外国人レーサーがゲストとしてやってきました。当時名もないレーサーで、 今でも別に有名ではないその人が、このアンドリュー・ストラウド君です。 こんなヘルメットをかぶってたなんて、正直言ってぜんぜん 知りませんでした :-)。  当時私は英語など少しも分からなかったのですが、 「なんで僕はこんなアジアの三多摩にいるのだろう」という顔で所在なげに 気弱に笑っている彼に好意を覚え、「やあ、きみはモリワキのバイクに乗っ てたね。今度レースを見に行くから頑張ってね」などと話し掛けたのでし た。考えてみると私が話したことのあるレーサーは、彼ただ一人だ。  彼の現在について調べていただいたKさんによると、今でも別に速くはな いのに、その気弱なナイーブさがウケて(かどうか)世界選手権などでも走 らせてもらえてるようです。よかったねえ、アンドリュー君。
 私には同じくバイク乗りの弟がいるのですが(「呆れたケーサツのお話」 で猫と一緒に写っているボーイ)、こいつは私と違って「よいものを手に入 れて大事に使う」という見上げた青年です。彼が選んだヘルメットがこれ。 イタリアはAGV社製の高級美しいカラーリング&特製ポーチつきヘルメッ ト、イギリスのニールマッケンジーというレーサーのレプリカモデルです。  このマッケンジーは一度関東の筑波サーキットを走ったこ とがあるのですが、かけつけた私と弟の目の前で毎週1秒以 上後続の日本チャンピオンを離してぶっちぎるという恐ろし い速さを見せてくれました(1周はだいたい1分)。もう、 観衆は口あんぐり状態。それに感動して、弟はこのヘルメットを買っちゃっ たのですね。今でも大事にかぶっています。
 その同じ日、世界トップの小排気量レーサー・スペインのガリッガ選手も 同じようにぶっちぎりを見せてくれました。この人は当時もっともバイクを 寝かせて走るライダーで、筑波サーキットは小回りの多いコースなのでその 切れ味を存分に見せて楽しませてくれました。  レーシングサーキットというのはスターであるライダーも一般人も同じ場 所をぶらぶら歩いているという不思議な場所なのですが、そのレースが終わっ た直後、控え室に戻る道をガリッガ選手がこのヘルメットを小脇にかかえて 歩いていました。 ───というか実は、ガリッガ選手の走りは知れど顔など誰も知 らなかったので、このヘルメットを持っていたからガリッガなの でした。私は彼のファンだったので話し掛けたかったのですが、「英語も分 からんのにスペイン語で話すのは不可能だよな―」とためらわれ、遠くから 『ガリッガー! かっこよかったよー!』と叫ぶのみなのでした。彼にはあの とき日本に彼のファンがいて声援を送っていたなんて、分からなかっただろ うな―。まあ仕方がない。
 というわけで、Kさんのおかげでいろいろバイクレースのことを思い出し ているこの頃です。どうもありがとうKさん、おかげさまではじめて完全画 像対応のページが作れました :-)。Kさん自身も、みずからの作品を一望で きる Web ページを作成するかもしれないと言っています。もしそれが完成 したら、バイクレースファン必見ですね。
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