Neil Young Concert, Oct. 1996
From: Tomo_Sakata (sprynet.com)
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Subject: Neil Young Concert, Oct. 1996
Date: Fri, 25 Oct 1996 09:20:00 GMT
■□ バンクーバーに住むサカタと申します
ニールヤングのコンサートをおととい見てきたので、そのことについて
書かせてください。もしこれからすぐニールヤングが日本でコンサートを
やるなら、そしてそれを見に行かれる方は、やりそうな曲がバレるしその
他いろいろな理由で読まないほうがよろしいかもしれません :-)。
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「Rockn' Roller Never Dies」で【ガーガガガガガーガガガガー】と、あ
の世界一歪んだギターの音と共に超イモ的にコンサートが始まり、「Hey
hey, My my」とあの声が聞こえる。ギャ〜やっぱりニールヤングは最高だー
と一瞬絶頂に喜んだのだが、......それ以降が全くだめであった。3曲続
けてロックンロールがあったのだが、どれもつまらん曲で、しかもとにか
くギターソロが長い。ニールヤングの破壊的なギターは大好きなのだが、
いくらなんでも 64小節とか延々とグギョグギョとノイズをやられると、う
んざりする。どんなギターだってあんたの声にはかなわないのだ、もっと
声を聞かせてくれ。
そして3曲目のエンディングが超長くて、Who でもここまでは引っ張ら
んぞというくらいジャ──────────────────────ン・
グギョ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んんんとやられ、それで完全
にしらけてしまった。いくらなんでもこれは尋常ではない。会場はそれで
も爆発的にウケているけれど、......俺は全然予期してなかったものを見
にきたようだ。
そこでニールヤングがひとりでアコギの「Damage Done」をやり、客席大
合唱。やっぱりいい声だ、いい歌だと思うけれど、俺はこんな風に扱われ
たくてここにいるのだろうか。つまらん曲に数曲耐えれば、最高にいい古
い歌を1曲聞かせていただける、だなんて。俺はニールヤングが今やりた
いことに興味があるんじゃなくて、こういう古い曲を聴きたいだけの客な
んだろうか。ニールよ、それじゃあまりに嘘っぱちだ (C) 頭脳警察。それ
じゃあまりに、非ロックではないか。
もういったん冷え切った気持ちがどうしても戻らない。会場の盛り上が
りと自分の冷めて行く一方の気持ちの差が悲しくなってくる。そして
「Helpless」。子供の時から愛したこの歌をニールヤングがやっている。
歌詞だって一緒に歌えるぜ。それなのに少しも感動しないことの悲しさに、
本当に涙が出てきそうになった。昔RCがはじめて「雨上がりの夜空に」
じゃない曲でコンサートを終えた野音でつまらんと感じ、そして「なんだ
俺はなにを見にここに来たのだ」とうんざりしたのと全く一緒だなと考え
ていた。
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そしてまたつまらない曲とノイズギターソロが延々と続く。俺は大好き
なニールヤングに、俺の知らないイイ曲をやってもらって感動したいのに。
今現在のニールヤングに感動させてほしいのに、まるで鳴かず飛ばず。ニー
ルってこんなライブをする人だったのか、全く知らなかった。考えてみれ
ばニールヤングを TV で見たのって、誰かのコンサートのゲストかロック
フェスで名曲をやったときだけだもんなー。そういうところでこんな狂乱
のライブをやれるわけがないので、ワイルドで声と曲がめちゃいいという
ニールヤングのいいイメージだけしか持ってなかった。こいつは、ちょっ
ととんでもなく切れてる人なのだ。
クレイジーホースというバックバンドがまた才能のない連中の集合体で、
ただ単にニールヤングが一人では出せない《よりでかい音》を出すためだ
けにいるという情けない奴らであった。こいつらがニールをもっといい方
に引っ張って、もっと違った演奏をさせようと努力しないのも悪いと腹が
立ってきた。なにもかもニールのする通りに従って、それでもミュージシャ
ンかね君たちは。『歌ってギターソロを取ってバンドの音量もエンディン
グの長さも決めて』と、ニールヤング一人の呼吸でしか物事が進まないか
らつまらないのだ。そこがちゃんとしたバンドであるストーンズなんかと
は違うのだ。......しかしニールヤングのことは好きすぎて、奴がこうし
て楽しませてくれないことについては腹が立ってこないのだった。ただた
だ悲しいだけなのだった。
そして大御所だからかコンサートは意外に早く終わりに近づき、最後の
曲。イントロでまたバンドがゴ〜〜〜〜〜とノイズを鳴らし始めたので
「Like A Hurricane」だと分かったのだが、そのイントロが鳴り始めても
ああやっぱりねと思うだけだった。この曲だって、何度聞いて、何度自分
でも演奏したことか。悲しい。10 分以上にも及ぶ超長ギターソロ付き破壊
的「Like A Hurricane」でコンサートは終わった。はあ。
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アンコール、つまらない曲。もうどうでもいい、帰ってしまいたいとい
う気持ちになっている。だけどアンコールの最後の曲が鳴り始めた時、あ
あと琴線がつよく弾かれた。
メジャーなコードの8ビート。つくづくこういうポップな曲はいいと思っ
た。こういう曲をまだニールヤングは作れるのだ。やっぱり単なる才能の
枯れた偏屈じじいとはちょっとだけ違う。ポップさが、曲の力自体が、ニー
ルヤングが Rockn' Roll Demon として簡単に堕ちていくのを引き止めてい
る。俺が生きて、働いて、チケットを取ってホールにこうしてバスで駆け
つけている現実というものに引き止めている。バンドが情けなくて出来な
いことを、俺たち凡庸な客がニールに要求できないことを、ニールヤング
の書いた曲自体がやってくれていると思った。どつぼに悲しい気持ちがすーっ
と抜けて行って......まあそのくらいで全部抜けはしないけど (笑)、その
瞬間だけロックを素直に楽しんでいるという気持ちになれた。これはなん
のアルバムに入ってるんだろう。今度Rにアルバムを借りよう。
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はあ、しかしやっぱりショックだ......。俺が落ち込んでるのを見てM
が、「元気出しなさいよ。それにしても、あんなに自己耽溺的なミュージ
シャンは初めて見たわね」と笑ったのだが、それともちょっと違うような
気がする。ニールヤングが自分のギターに酔ってるとは思わんし。なんか
もうちょっと別の......なんか、誰にも理解されない天才画家が絵を描い
てるのを横で見てるような、好きな人と自分との関りのなさがつらかった
のかもしれん。「そうね。客なんか屁とも思ってないわね、彼は。ストー
ンズは最高のエンターテイナーだったわよね」。......うん。
......いやでもストーンズは古い曲をやれば客が喜ぶからやる、という、
商売人的な『エンターテイナー』ではなかったと思う。奴らには自分たち
の好きなミュージックをいい音で鳴らすという、子供みたいな真剣さがあっ
たと思うよ。違うかい? 今日のニールヤングの「Helpless」のほうが、
その意味では儀式みたいな、客へのサービスそのものに聞こえたよ。それ
が悲しかったのだ。「Heart Of Gold」をやれって要求してる客がいたけど、
あの状況であの歌をもしやられたら、俺はきっと耐えられなかったよ。
ああいう切れてる自分をそのまま見せる、というのはすごく正直なこと
だとは思うけど、それをファンとして見たいかどうかはまた別の話だよね
───そう言いながら、昔一緒にやってたHのことを思い出していた。
「でも明らかに客はみんな大喜びしてたわよ。客を見てると面白かったわ。
みんなニールがああして好き勝手に楽しんでるのを見て、自分もうれしい
のよきっと」。そうか......カナダ人はなんかミュージシャンに寛大だよ
なあ。......しかしそんなんでいいのか (^_^;)。
まあ、ニールヤングの真摯とは、どこまでも続く自分の一本道をたどる
という孤独な男の真摯さなのかもしれんね。それはつくづく感じたよ。し
かし......はあ。......まあともあれ、あんなミュージシャンは初めて見
たよ、それだけは確かだと弱々しく笑う俺なのだった。
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というわけなのでした :-)。友人のニールヤング狂Rによると、ニール
ヤングはそのときどきでおそろしく違うライブをやるんだそうで、彼が以
前見た時は完全なるカントリーミュージックをやったそうです :-)。「そ
してときには君の見たような Demon と化す奴なんだよ、彼は」とのこと。
そうかー。天才は全く理解しがたいぜ。
......だけど好きなんだよ、ニールヤング。次に見る時は、もっと違うあ
んたが見たいな。
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